あたし、通勤で毎日地元の川を渡るんですね。大きな川です。
地震がきて「もしもこの橋が崩れてしまったら、一体どうやって渡ればいいのか」と考えながら。
「子供と川遊びに使ったゴムボートを車に積んでおいたほうがいいかしら」とか「向こう岸から引っ張ってもらうように長くて太いロープを車に積んでおいたほうがいいかしら」とか。
そんなことを考えながら毎日通勤するわけですが、河原を見るたびに思い出すことがあります。たしか高校生くらいの時だったと思うのですが「万葉の人々」って本を読んだんですね。その中に、
「信濃なる千曲の川の小石も君し踏みてば玉と拾はむ」
という歌があり、とても心に残りました。
これは「信濃の国にある千曲川の小石だって、好きな貴方が踏んだ小石ならば玉と思って拾いましょう(川の中のただの小石でも恋するあなたが踏んだものなら私にとっては宝石と同じです)」っていう意味です。乙女心ですね。
この頃あたしには付き合っていた人がいて、そんなに長くお付き合いしたわけではなかったけれど、川を渡るたびにこの歌を思い出し、そして「あれから35年余りの月日が経ったけれど、あの人どうしているかしら」と過去に想いを馳せるのでありました。
あ、あたしには離婚歴がありますが、ここに出てきた「あの人」は元旦那ではありませんよ。ハハハ。